Subject: [janl.385] 【JANL メールマガジン 2002/02/01 】 Date: Fri, 01 Feb 2002 08:25:26 +0900 JANLメールマガジン ================================== 2002/02/01 配信解除希望はこちらへ  janl-staff@cs.kutc.kansai-u.ac.jp -------------------------------------------------------------------- □ 目次 [JANLスクランブル] ● 情報理論(Information Theory)の父, Shannon 逝去から1年   (江澤義典・関西大学) [JANL役員から] ● 中国におけるITの明天(あす) (赤松辰彦・JANL事務局長) ==================================================================== ● 情報理論(Information Theory)の父=Shannon 逝去から1年   (江澤義典・関西大学) IT革命という用語は,新聞などで,毎日のように目にしている. 情報通信技術の基礎理論である「情報理論(Information Theory)」を創始 した Claude Shannonn 博士が逝去されたのは昨年の2月24日であった. 博士の業績については下記のサイトを参照して頂きたい. http://www.bell-labs.com/news/2001/february/26/1.html http://web.mit.edu/newsoffice/nr/2001/shannon.html #英語が苦手な方には次のサイトがお勧めできる. http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2001/0228/calude.htm http://it.nikkei.co.jp/it/njh/index.cfm?o=1&i=20010424s2001s2 先月号のJANLメールマガジンではJANL監事の安藤氏から,日本社会における 様々な「情報倫理」に関連する核心が指摘された.すなわち,倫理構築を妨 げている要因として,多くの責任ある(responsible) 立場の人たちに,社会 から「説明責任(accountability)」が要請されているという自覚が不足して いるのではないかとの問題提起である. すなわち, 「個々の社員や官吏はその属する組織の中では一生懸命に誠心誠意に  仕事をこなしているのですが、その行動原理を外部にも組織の中で  も充分に説明していないので、結果的には社会に害悪を与えるよう  なことをしていることに気が付かないのです。事件が起こり外部に  報道されて始めてその真実が知らさせることが多いのです。」 と述べられている. 情報通信理論の面から考えてみても,この指摘は極めて適切だといえることが 分かる.通信(コミュニケーション)の課題は「ある地点からメッセージを 他の地点に正確にあるいは近似的に伝送して再生させることにある」という風 に明確に示したのが Shannon の功績であった.そして,これが今日のデジタル 通信技術の基盤となったのである. それまでのコミュニケーション理論においては,以心伝心というか,いか様に して他者の意図が理解できるのかを明確に説明できなかったのである. 結局,メッセージとして表現されなければ,相手方や他者に伝達されることは あり得ないのである.まずは,意識的に「説明を試みる事が」大切であるとい うことに気づくことが重要だといえよう. とくに,様々な社会活動の中で,責任ある立場の人達による accountability が きちんと果たされる事で,情報倫理の構築が進むと期待できる点を強調しておき たい. -------------------------------------------------------------------- [JANL役員から] ● 中国におけるITの明天(あす) (赤松辰彦・JANL事務局長) 日本経済新聞朝刊の2002年1月13日号から1月20日号まで7回に分けて、中国のIT に関する記事が連載されました。中国の情報技術大手、北大方正集団(北京市)が 65000字という膨大な漢字データを収録したデータベースを海外で発売するという 記事から始まっています。 この漢字データベースには、中国のほか日本、韓国、ベトナムなどでしか使われて いない漢字も網羅しているようです。 「文字は文化のインフラ。漢字を世界標準の文字にしたい。」との売り込みですが、 確かにインターネットがもてはやされ、プロトコルの標準化は進んできたと思いま す。しかし、インターネットは情報のインフラですが、情報をつくる文字のインフ ラとしての漢字に目をつけたという発想は中国ならではではないかと思いました。 中国では国家標準の漢字に対応しないプリンターは販売できなくなるということも 書かれていました。 中国政府は昨年9月、国家標準の漢字を改定し、字数を6700字 から約27500字に増やしました。 改定に伴い、新標準のソフトを搭載しないパソコ ンやプリンターなどの出荷を禁じる処置をとったそうです。  漢字への対応は、アメリカやヨーロッパでは技術需要が少なく、日本国内における 独自の技術改良が進んできています。実際、「超漢字」システムではJIS漢字(第1 水準、第2水準、第3水準、第4水準、補助)17290字の他に中国伝統字(13735字)、 中国簡体字(7445)、大漢和辞典収録文字(51053字)など合計17万4千字を越える 文字が扱えるそうです。 (ご参考)  http://www.chokanji.com/ 最近の日本のIT業界は不況のトンネルの出口を探しているようで、一人勝ちする 企業以外はまさにどん底です。今では日本企業も中国駐在もしくは合弁で会社設立 している例は珍しくありませんが、ITベンチャーとなるとそうはいきません。 ITベンチャーには技術力はあっても、資金力だけでなく、人脈という意味からも かなりのハードルです。 また、中途半端な技術力では中国には歯が立ちません。中国ではアメリカ、ヨーロ ッパを市場とみた企業戦略がすすんでいます。 1年前に北京のシリコンバレーとよばれる地区に視察に行きましたが、IT革命が 叫ばれ始めた 5年前の日本の情報産業の賑わいをみているようでした。しかし、わ ずか 6ヶ月で半年前の日本に追いつき、今や日本の技術力を脅かすほどのIT業界 です。中国の国策がベンチャー企業を後押しし、銀行からの投資が計画されている などと、まさに数年前のITブームの日本をみているようです。 中国は北京と上海にITビジネスの拠点がありますが、ネット系は上海は目玉になっ ています。今までは中国に技術移転してきた立場でしたが、今後は逆転しそうです。 -------------------------------------------------------------------- [編集後記] 2002年1月31日号の日刊工業新聞に「欧米は“法の国”,日本は“道徳の国”, そして中国は“人の国”」という句が引用されていました.赤松さんの記事 と符合しているのに驚きました. 読者の皆さまからのご指摘や投稿をお待ちしています.新しい記事の投稿や 今回の記事に対する批判・コメントなど大歓迎です.(義) ==================================================================== [JANLメールマガジン] バックナンバーの閲覧は、以下のホームページからご自身でお願いします。 http://www.janl.net/magazine/ 編集:JANL 運営委員会 発行:日本情報倫理協会事務局 (〒569-1095 高槻市霊仙寺町2−1−1関西大学総合情報学部江澤研究室内) 情報倫理に関するご意見や転載を希望する場合はJANL事務局にご連絡下さい。 MM配信解除の希望もこちらへ  janl-staff@cs.kutc.kansai-u.ac.jp