Subject: [janl.384] 【JANL メールマガジン 2002/01/14】新年号 Date: Mon, 14 Jan 2002 18:24:38 +0900 JANLメールマガジン ================================== 2002/01/14 配信解除希望はこちらへ  janl-staff@cs.kutc.kansai-u.ac.jp -------------------------------------------------------------------- □ 目次 [JANLスクランブル] ● IT革命とティップス(その2)   (江澤義典・関西大学) [JANL役員から] ● 情報倫理に思う (安藤倬二・JANL監事) ==================================================================== ● IT革命とティップス(その2)   (江澤義典・関西大学) IT革命の進展を考えてみると,技術の発展とともに倫理構築もその度に 工夫されてきていることが分かります.ここでは、情報を発信するコツ (tips)について考えてみることにします. 第0次IT革命:言葉(音声言語)による表現によって様々な集団社会に おける情報共有が可能になったのです.なかでも,「声を上げる気持ち」 が技術以前に必要だという事を再確認しておきたい. 黙っていても,気づくはずだ.気づいてくれて当然だとの勝手な思い込 みは誤解される可能性が高いのであり,望みの結果を得るためには,自 分自身で自分の意図を説明する必要があるのです. 乳児は泣き声で母親や父親に空腹などを訴えます.病人は,身体の不調 を感じたとき,医師にその痛む部分や痛みの具合を説明します.そのと き,相手が理解できると想定した表現手段を工夫することが「技術」と して有効なのです. 子どもが言葉を使えるようになると劇的に家族間の会話が進むようにな ります.外国旅行をする場合には,その土地の人々が使っている言葉を 学習するのが必須になります.自己表現するのに都合の良い母語が,必 ずしも,相手の理解し易い表現とは限らないという認識が重要です. 第1次IT革命:文字を使った表現は時間の経過の影響を受けない文書と して伝達できるのでとても有用です. そして,文章を書く技術としても,「音読」の重要性を指摘しておきた い.自分の考えを記したメモであっても,黙読や斜め読みでは気付かな かった重要なコトが音読で発見できる事実に,着目したい. 第2次IT革命:印刷技術の普及により,紙にプリントして複数の人々の 間での情報共有手段として手軽に利用できます. しかし,綺麗に印刷された文書として配布するときに,その文書の意図 を第三者に対しても「言葉で説明できる」ことが大切だと思います.著 者一人の思い込みに過ぎない印刷物では説得力に欠けることになります. 第3次IT革命:ラジオやテレビなどの電子報道メディアは,その音声や 映像による速報性とリアルさが画期的であり,事件現場から中継される ニュースは地球規模での啓発を推進する手段となっています. しかし,録音したデータや録画したデータを「発信」するときには,意 図的な編集を廃する,メディア倫理が求められます. 第4次IT革命:コンピュータを利用できる環境が飛躍的に整ってきてい ます.そこでは,電子の速さも重要ですが,コンピュータによるディジ タル技術を応用したインターネットでの情報発信が手軽に利用できるよ うになっています. そして,ディジタル技術による映像や音響のコラージュ(Collage)はその リアリティを偽る可能性があるので,誠実な倫理感が求められます. インターネットにアクセスできる人は誰でも,それぞれの職務や生活を しながら,市民としての情報行動が可能になります.最近は,市民によ る告発や下級官吏による上級官吏の告発,個人利用者による製造企業の 告発,父母による子どもを担当している学校教員の告発など,社会の様 々な歪みを多くの人々に報せて共有することが可能になっています. このようにITが進展してきた現代では第0次から第3次IT革命まで開発し, 社会として継承してきた情報発信技術に加えて,第4次ITを応用した『e- 技術による情報発信』が課題になっているのです. -------------------------------------------------------------------- [JANL役員から] ● 情報倫理に思う (安藤倬二・JANL監事)  情報ネットワークのソフトやハードが急速に発展するとともに大容量の インフラ環境が目に見えて整ってきました。同時にそれを利用する側の情 報倫理がますます求められるようになった背景には、一体どんな要因が潜 んでいるのでしょうか。  インターネットはグローバルなので地球全体に関わる広域的な観点から 問題点をあぶり出さなければなりませんが、とりあえずは日本国内の事情 に論点を絞ります。そこから逆に世界に広げることも可能でしょう。  「倫理」の文字からくるニュアンスは、「倫」は人間同士の仲間の関係 を表わしており、「理」は道理を表わしているので、「仲間同士の道理」 を踏まえて行動することが倫理の基本となります。情報革命が進んだイン ターネット時代でも結局は人間の生身の関係を重視するアナログ的発想か ら出発しているわけです。もっと踏み込んで考えますと、結局は社会を構 成する個人個人の責任感であると言えます。責任感をもって行動さえして おれば先ずは間違いありません。  ところがここに問題点があります。日本の大部分の市民はそれぞれに充 分に責任感を持っているに違いありません。相応しい教育を受けており識 字率も100%に近い、この大不況といっても餓死者が出ることもありま せん。社会インフラが発達し近代化されているのです。それにも関わらず、 毎日の新聞の社会面に報道される事件がどうしてこんなにも続くのでしょ うか。  今年、大企業の突然の倒産劇、雪印乳業、三菱自動車、肉骨粉の狂牛病、 国家公務員による組織的横領、書き上げたらきりがありません。民間企業 だけではなく指導的立場にあるはずの諸官庁が深く関わった事件が毎月毎 月、報道されているのはどうしたことでしょうか。日本人はみな充分な責 任感覚を持っているはずなのに、何故こんなことになっているのでしょう か。  結論を先に急ぎますと、「責任」の日本語があいまいなのです。日本人 全員が持っている「責任感」は英語では Responsibility ですが、大企業 や官庁組織の行動原理をつかさどる行動目的を「説明出来る責任」は英語 では Accountability で、これが特に日本では欠けていると考えられてい ます。個々の社員や官吏達はその属する組織の中では一生懸命に誠心誠意 に仕事をこなしているのですが、その行動原理を外部にも組織の中でも充 分に説明していないので、結果的には社会に害悪を与えるようなことをし ていることに気が付かないのです。事件が起こり外部に報道されて始めて その真実が知らされることが多いのです。 この「説明できる責任」が欠けている現状は、一種の欠陥社会であると 言っても過言ではないでしょう。封建時代から残っている特権意識の官僚 主導社会構造そのものが、情報倫理の構築を疎外する最大の問題点になっ ていると思います。  小泉純一郎首相が率先垂範して進めておられる「小泉MM」(メールマ ガジン)の発刊が、政府の行動原理を「説明できる責任」を一歩前進させ るきっかけになっており、これに追随する官庁や大企業が増えてくること が望まれます。 -------------------------------------------------------------------- [編集後記] 新年あけましておめでとうございます.昨年は世界規模でのテロという 深刻な事件があり,激動の新世紀幕開けとなりました.今年こそ,健や かな年となることを念願しています. 本年も,JANLメールマガジンを継続していく予定ですので,読者の 皆さまからのご指摘や投稿をお待ちしています.新しい記事の投稿や今 回の記事に対する批判・コメントなど大歓迎です.(義) ==================================================================== [JANLメールマガジン] バックナンバーの閲覧は、以下のホームページからご自身でお願いします。 http://www.janl.net/magazine/ 編集:JANL 運営委員会 発行:日本情報倫理協会事務局 (〒569-1095 高槻市霊仙寺町2−1−1関西大学総合情報学部江澤研究室内) 情報倫理に関するご意見や転載を希望する場合はJANL事務局にご連絡下さい。 MM配信解除の希望もこちらへ  janl-staff@cs.kutc.kansai-u.ac.jp