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Subject: [janl.381] 【JANLメールマガジン 第4号】2001/12/01
Date: Mon, 3 Dec 2001 23:54:44 +0900

JANLメールマガジン ================================== 2001/12/01
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□　目次

［JANLスクランブル］
●　IT革命とティップス
　　（江澤義典・関西大学／日本情報倫理協会会長）

［JANL役員から］
●「ネットワーク・セキュリティ　ワークショップ in 越後湯沢」に参加して
    （工藤英男・奈良工業高等専門学校）

［JANLの動き］
●　邦訳プロジェクト始動
　　（江澤義典・関西大学、田中規久雄・大阪大学、中條道雄・関西学院大学）


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［JANLスクランブル］

●　IT革命とティップス（IT活用のコツ）

関西大学の江澤義典です．

IT革命の歴史を簡単に振り返ってみると，技術の発展とともに私たちの社会
における倫理構築もその都度に拡張されています．

情報技術は社会の様々なところで活用されますので，経験を積んだ技術につ
いては様々な活用方法が蓄積されているのですが, 基本となる技術の根本は
普遍的だと思われます。ここでは、情報を得るコツ（tips）について考えて
みることにします．

第0次IT革命：言葉（音声言語）を使うことで様々な集団社会における情報
共有が可能になったのです．
しかし，話し方の訓練も一筋縄では実効が上がりません。相手の言う内容を
正確に理解するためには、相手の意図を上手に引き出す対話技法が要求され
るのです．なかでも，「適切な相づち」がとくに技術として必要になります．

第1次IT革命：文字による記録の利活用です．文字を使った表現は時間の経
過の影響を受けない文書として伝達されるのでとても有用です．
そして，文章を読む技術としては、「音読」の重要性を指摘しておきたい．
黙読や斜め読みでは気付かなかった重要なコトが音読で発見できる事実に，
着目したい．

第2次IT革命：印刷術の発明により，「本」や「雑誌」さらには「新聞」な
どといった形で手軽に利用できるようになってきています．
小学校や中学校・高等学校などの学校教育で使われる教科書は，多くの教育
関係者が吟味を重ねた内容を推敲を重ねて執筆しているので，信頼度が高い
のは事実です．しかし，一般書や雑誌記事となると，校閲者による校正は済
んでいても，誤植だけでなく本質的な誤りが含まれている場合もあります．
したがって，綺麗に印刷された文章を読み解くときには，多様な視点からの
読解を可能にするには，第3者に読後感を「言葉で説明する」ことが有効だ
と思います．

第3次IT革命：ラジオやテレビ・ビデオなどの情報メディア産業が生れました．
ラジオやテレビは，ニュース伝達メディアとしては，その音声や映像による
速報性が画期的であり，事件現場から中継されるニュースは現代社会には不
可欠のものとなっています．
しかし，テレビ局やラジオ局で編集されたニュースを「批判的に読み解く」
のは容易ではありません．少なくとも，数社のニュースを「比較視聴した」
上で，その相違の原因を複数の友人と「話し合う」ことが有用だと思います．

第4次IT革命：コンピュータやインターネットを利用できる環境が飛躍的に
整ってきています．そこでは，電子の速さも重要ですが，デジタル方式の
コンピュータによる超精密自動制御技術が鍵になります．
すなわち，アナログ技術だけしか使えなかった場合とは異なり，デジタルな
データ処理が可能になっているので，疑問点や不審点を確認するには大した
手間を要しないのです．
例えば，インターネットを利用してニュースサイトを検索すると，数日間を
遡っての，事件報道の流れを確認することは誰にでも容易にできることが分
かります．そして，複数の友人と話し合うときにインターネットのMLやWWW
を効果的に使うことで従来のメディアでは限界があった様々な障壁を克服で
きる可能性があります．

このようにITが進展すると，日常生活においても第0次から第3次IT革命
までの情報技術の全てを利活用することが求められるのは当然なのですが，
それに加えて第4次ITを応用した『e-技術』が注目されているのです．

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［JANL役員から］
●「ネットワーク・セキュリティワークショップ in 越後湯沢」に参加して
    （工藤英男・奈良工業高等専門学校）

11月15日(木)から17日(土)にかけ、新潟県の越後湯沢にて、表記のワーク
ショップが「Information Securityから Information Assurance へ― そ
のための技術・法務・知識」のサブテーマで開催され、約250名の参加があ
りました。参加者の内訳は企業
関係が63企業116名、大学等教育機関が13名、警察関係者が34団体52名、
国・自治体関係が13団体24名でした。
このワークショップでは、Information Assurance という観点からサイバー
社会のあり方を見つめ、その上でクラッキングや不正アクセス、コンピュータ
ウィルス等のネットワーク犯罪への対処方法、プライバシーの保護や知的
財産権の侵害防止などネットワーク・セキュリティのあり方を捉え直し、
いかにして国際的なサイバー社会の秩序を維持するかを、技術、法律、
ビジネス、そして電子政府構想と様々な視点から議論されました。

＜初日は＞実行委員長である石井威望先生からの開会挨拶と海外からの
報告がありました。
（１）「Information Assurance」
        John E. Totah 氏（Microsystems Inc.）
（２）「欧州におけるコンピュータ犯罪・サイバー犯罪条約」
        John Austen 氏  （Computer Crime Consultants Ltd.）
（３）「インドにおけるネットワークセキュリティ」
        Harsh Obrai 氏  （Datamatics KK.）

夕食後のナイトセッションは「ここが変だよ、○○○」のテーマで、
総合司会の高橋麻衣子さん、コーディネータの須川賢洋氏、パネラー
の高橋郁夫(弁護士)氏、羽柴正夫(新潟大学医学部付属病院)氏、
藤野健一(国土交通省北陸地方整備局)氏、佐藤友治(インターネット
総合研究所)氏、熊谷勉(警察庁情報通信局)氏により活発な意見交換
が行われました。

＜2日目は＞午前中は佐々木良一（東京電機大学）教授による特別講演
「ブロードバンド時代に重要となるセキュリティ技術」 と苗村憲司
（慶応義塾大学)教授による基調講演「ネットワーク社会の安全保障
－立法と政策への期待」がありました。
今年の３月まで日立製作所のセキュリティシステム研究センター長を
されていた佐々木先生からは、非常に具体的にセキュリティ技術に対
するご説明がありました。また、苗村先生は、ネットワーク社会の安
全保障として新たな枠組みの必要性を述べられました。倫理に関して
は、職業倫理、公衆道徳、ネチケット（モラル）の３つの階層につい
て触れられました。

午後は，以下の分科会が行われました。
Ａ会場:セキュリティ
「日本政府のセキュリティ対策」
  須永和男（内閣セキュリティ対策推進室）氏
「ＩＴセキュリティ問題の緊急対応体制と手順のあり方」
  佐藤慶浩（日本ヒューレットパッカード）氏
Ｂ会場:電子取引
「e-Japan構想と法律上の整備-競争政策、GPKI、電子商取引、
  セキュリティ-」
  高橋郁夫（弁護士） 氏
「国土交通省におけるIT化の取り組み」
  深澤淳志（国土交通省 建設技術調整官）氏
Ｃ会場:コンシューマ
「裏側から見たデジタル著作権」
  須川賢洋（新潟大学法学部）氏
「インターネットオークションにおけるセキュリティとリーガル
  リスクマネジメント」
  土井悦生（E-Bay Japan 法務部／弁護士）氏

その後、分科会の総括を兼ねたパネルシンポジウムでは「ＩＴ化社会、
私はこうすべきと思う。それぞれの立場から」 をテーマで佐々木先生
と全分科会の講師を交えて行われました。

夕食後の警察向けセッションでは廣瀬一夫(新潟県警：今回のワーク
ショップの裏方)氏が、官庁向けセッションでは長谷川誠(新潟大学)氏 、
ビジネス向けセッションでは藤本一男(メモレックス・テレックス)氏、
教育機関向けセッションでは滝沢寛之(新潟大学)氏/大橋謙介
(㈱ＩＴスクエア)氏 が各コーディネータを分担されました。
また、湯沢町商工会主催セッション「地方の情報インフラ整備について」
ではコーディネータが岸野裕(ＨＩＣ)氏で、ゲストスピーカとして
藤野健一(国土交通省北陸地方整備局) 氏と佐藤浩(東北インテリジェン
ト通信)氏の話題提供がありました。

＜最終日は＞
「医療情報管理における法的問題点と対策」
  秋山昌範(国立国際医療センター)氏、
「ネットワーク侵入検知に関する技術・運用・研究の現状」
  武田圭史（防衛庁航空自衛隊）氏、
「ソフトウェア開発・調達プロセスの改善に向けて」
  中山尚登(経済産業省情報処理振興課) 氏
の講演がありました。
A-netや肝ネットなどの政策医療ネットワーク構築をされている秋山
先生は、医者を信頼する「フェースtoフェースの付合いが大切」、
95年に医師会のメーリングリスト（1，000名）では年に１回の
「フェースtoフェース」を開催しているとのことで、これからの日本を
良くするためには今回のように様々な分野の方々との交流、
ワークショップが大切だと力説されました。
オープンソースのネットワークＩＤＳであるpakemonの開発者である
武田氏は、最初に「ＩＤＳなんていらない。」というスライドで講演が
始まり、最後には「ＩＤＳ：ないよりはあった方がいいかも。」で締め
られました。なお、日本のネットワークセキュリティを高めるために、
「正しい情報を」，「安全製品を」，「地味な作業の継続を」をあげ、
さらに「シンプルなメールクライアントの開発」の必要性を述べられま
した。また、中山氏からは、ソフトウェアプロセスの改善における
ＣＭＭ（成熟度モデル）ＣＭＭＩ、ＳＰＩ手法等の説明があり、
ソフトウェア工学に関する教育不足を指摘されました。

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［JANLの動き］
●　邦訳プロジェクト始動
　　（江澤義典・関西大学、田中規久雄・大阪大学、中條道雄・関西学院大学）

以前に、ＪＡＮＬのメーリングリストでも話題になりました、アメリカで評判の
情報倫理に関する大学における一般教育用教科書を日本情報倫理協会として邦訳
することになり、邦訳プロジェクトが開始されました。来年の４月にはピアソン
・エデュケーション社から出版される見通しです。
原著は Sara Baase さんによる A Gift of Fire: Social, Legal, and Ethical
Issues in Computing で 1997年に Prentice-Hallから出版されたものです。
ご期待下さい。

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［編集後記］
本年、最後の号になります。皆さまの2001年はいかがだったでしょうか？
このメールマガジンは毎月始めに配信することにしていますが、来年の正月
分は、年末年始の通信事情も考えて、１月８日頃の配信になる予定です。
予めご了解下さい。
読者の皆さまからのご指摘や投稿をお待ちしています．新しい記事の投稿や
今回の記事に対する批判・コメントなど大歓迎です．（義）

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編集：JANL 運営委員会
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