JANL共催・研究会記録

教育システム情報学会高等教育部会 研究会
テーマ 高等教育機関における情報倫理教育/一般
主 催 教育システム情報学会 高等教育部会
共 催 情報教育学研究会(IEC)、日本情報倫理協会(JANL)
日 時 平成20年1月12日(土)13:00~17:00
場 所 関西学院大学大阪梅田キャンパス
大阪市北区茶屋町19-19
アプローズタワー 10階 1004号室
参 加 参加申込:不要 参加費:無料
内 容 【前半13:00-15:00】座長:中西通雄(大阪工業大学)

13:00-13:30

■ 「アメリカの大学における情報倫理教育の最新動向」
  中條道雄 (関西学院大学)

 アメリカの大学においてはコンピュータ教育の歴史の初期より情報倫理教育の重要性が認識されてきたが、ACM/IEEEによるカリキュラム提案(CC2001)においては"Social and Professional Issues"(SP)単元の中に10のトピックが提示されている。最近の動向としては2007年6月に文系における情報教育カリキュラムが Liberal Arts Computer Science Consortium (LACS)から提案されたが、その中でも情報社会における社会的課題が明示されている。本講演ではこれらのカリキュラム提案やいくつかの注目される実践発表などにおける「情報社会に参画する態度」の育成(特に情報倫理)に関連する最新動向を紹介し、わが国における高等学校での教科情報実施を経て入学してくる大学生に対する情報基礎教育の改革に向けて示唆するものを探る。

13:30-14:00
■ 「情報倫理の指導カリキュラムと教材」
  高橋参吉(千里金蘭大学)

1)文部科学省の情報モラル指導カリキュラムについて
2)情報倫理2008の教材
3)DVD教材、情報化社会の光と影 Vol.2
4)今後の教材
5)大学への接続性


14:00-14:30
■ 「ボードゲームを利用した情報倫理教育導入の試み」
  廣田千春(奈良高専専攻科)、山口賢一(奈良高専情報工学科)、   松尾賢一(奈良高専情報工学科)

 情報倫理教育の中でも知的財産権は,高専生への技術者教育として必要不可欠であるのにも関わらず,あまり理解されていないのが現状である.そこで,奈良高専専攻科で実施しているPBL(problem based learning)形式演習において,知的財産権についての自学自習用コンテンツを作製し,導入教育への適用を試みる.
 具体的には,複数人で学習できて自学自習や反復学習に向いているゲーム,その中でもMonopoly(R)をモデルとした自学自習コンテンツ(ボードゲーム)を作製した.奈良高専1年生を対象に,作成したコンテンツを用いて授業を行った結果,知的財産権に対する知的好奇心を向上させる効果があり,本コンテンツに有用性があることがわかった.

14:30-15:00
■ 「社会人基礎力の養成と情報教育におけるPBLの役割」
  水野義之(京都女子大学)

 大学におけるキャリア教育の関連カリキュラム開発の課題の一つは、学生の「社会人基礎力(Generic Skills)」を如何にして伸ばすか、またこれに合わせて如何なるカリキュラム改革を行うかという問題である。本講演では、京都女子大学でのキャリア教育開発の研究過程を紹介しつつ、その応用として大学1年生後期の情報処理教育におけるPBLの導入について議論したい。
 広義のキャリア教育は長期的、多面的であり、社会人基礎力と呼ばれる広義の汎用的実践力の獲得過程と見なすのが適切である。この力の一部にはITスキルやコミュニケーション能力、また情報受発信における論理的、倫理的な判断能力や応用力が含まれる。しかし大学での情報処理教育に、この考え方が反映されることは少なかったように思われる。
 そこでまず、社会人基礎力が注目される背景、並びに諸外国でのキャリア教育の現状を振り返る。次に、大阪大学大学院工学研究科や東京電機大学等での先進的なPBL実践事例、あるいは沖縄高専での全科目PBL導入の研究等を踏まえ、特に情報処理教育の今後のあり方について、PBLを参照した構想の一例について、本学での事例を紹介しながら議論したい。

15:00-15:15 休憩

【後半15:15-16:45】座長:長野勝利(神戸市看護大学)

15:15-15:45
■ 「オンラインテストからの学習者の行動モデルの構築」
  篠田有史(甲南大学知的情報通信研究所),吉田賢史(甲南高等学校・中学校),   中山弘隆(甲南大学理工学部情報システム工学科)

 e-Learningの課題の一つは,学習者の状況にあわせ,教示内容を変更することである.そこで,学習者の知識状態を表す学習者モデルが開発され,問題の理解構造が反映されやすい課題に対して導入されてきた.一方で,人間の教員は,複数回の授業を通じて長期的展望からの学習者の行動のシナリオに触れ,それに対処する形で授業を実施していると考えられる.そこで,本研究では,複数のオンラインコンテンツを通じた学習者の行動のシナリオを明らかにするため,時系列を考慮した決定木構築手法と,非階層型のクラスタリング手法とを組み合わせた.ミクロ的視点からのルールに合致したマクロ的視点からのクラスタを選び出し,学習者の行動のモデルを導出した.

15:45-16:15
■ 「課題収集評価システムWebTAによる授業実践」
  下倉雅行(大阪経済大学),田中規久雄(大阪大学)

 我々が開発した課題収集評価システムWebTAは、学生からは課題提出および提出した課題の確認、教員からは課題の確認や採点などを容易に行えるようにするためのシステムである。課題提出に特化したシステムであり、純粋にPerlのCGI のみを利用することで動作する環境を広げている。ここでは、WebTAを用いて行った授業実践とシステムの有用性について報告する。

16:15-16:45
■ 「授業ビデオ評価支援システムの開発と評価」
  大倉孝昭(大阪大谷大学)

 平成17年度現代GP(e-Learning)に採択された「実践力をつける実習教育統合支援システム」の1つの柱である、学外実習(教育実習・保育実習等)の事前指導用教材として実習場面を収録したビデオ教材を作成した。発話は全て字幕化されており、字幕文をクリックすることで当該字幕のシーンに移動し評価コメントを付与することができる。字幕の書き込まれたセル(Webページにスプレッド・シートが埋め込まれている)を移動していくと、ビデオ・シーンもそれに同期して移動し、常にビデオと評価コメントを同期閲覧することができる。授業で他者の実習ビデオを評価させたとき、即時に指定時間幅で集計し、グラフ化できる。さらに、その棒グラフの棒部分を押下すると、評価詳細を閲覧する機能も実装した。他者の評価と比較して自分を反省することで、評価の視点や見落としなどを学ぶことができる。さらに、現職ベテラン教員や外部講師による評価も書き込まれており、プロの評価と自分の評価を比較することも可能である。
 本年6月の教育実習の前後に本システムを用いたところ、実習後には学習者の着目箇所が明らかに増加することが確認された。また、”他の実習ビデオをこの方法で学習したい”という反応が多く寄せられた。この成果をデモを交えながらご紹介し、評価学習の活かし方について議論を行う。

参加者 35名
更新:2008/1/14(月)


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